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とりあえず。雑記。

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新作SS

何とか日付変わる前にup。
22日のblogで書いたアイスクリームメーカーから
発展した話です。

またもや西軍の話。
一言二言くらいの台詞しかないけど一応
黒田、小早川、天海も出てきます。
島津のじっちゃんはいる事にはいるんですけどね・・・。

相変わらず不運な三成とかアニキが出てきますよ~。

甘い言葉とお菓子に注意
 
 
その日も九州最南端は暑かった・・・。
 
「皆の者、良い物を振舞ってやろう」
 
陣中にて、突然大谷が切り出した。
 
「どうした刑部。藪から棒に?」
「なに、三成。皆この暑さの中をがんばっておるのだ
 ここは一つ、疲れを取るために甘い菓子でもと思ってな」
「菓子でござるか!?」
『菓子』という単語に自他共に甘党と認める幸村が真っ先
に反応する。
 
「待てよ、真田。どんなモンが出てくるか判らねえぜ?」
「珍しい南蛮の菓子でな・・・」
「珍しい!南蛮!!」
二つの単語に警戒していた元親が釣られる。
 
「この暑さの中で食するのにぴったりの冷たい菓子・・・
 『あいすくりいむ』という」
とどめの『冷たい』という単語に正直、この暑さに辟易していた
全員の心が少なからず揺らいだのであった。
ただ島津だけは「おいの暑さ対策は酒を飲むことばい」と言って
ひとりで酒盛りを始めるのであった。
 
 
 
「それでは皆、好きな色の珠を選ぶがよい」
そう言って大谷は背後に浮いている数珠を指差す。
「なぜ、数珠?」
毛利が訝しげに突っ込む。
「これはいつもの数珠ではない。
 珠型のあいすくりいむを作る南蛮の器具なのだ」
「どうりでいつもと違って色彩豊かだと思った・・・」
「お、大谷!食い終わったらそれ貸してくれ!」
自身が感じていた違和感をポツリともらす黒田と
珍しい南蛮の器具に目を輝かせる元親。
そんな二人には目もくれず紫の珠を取る三成に
「武田は赤でござる!」と言って赤い珠を選ぶ幸村。
それぞれが選んだ珠を見て大谷がやたらにこやかな
理由を知るのはもう少し後の事である。
 
 
 
中身を器に盛るとひんやりとした冷たさが伝わってきた。
その冷たさをしばし手の平に楽しむ。
「・・・早く食さねば融けるぞ」
いっこうに誰も口にしようとしない様子に大谷が呟く。
暑さに負けたとはいえ未知の食べ物だ、どうしても
用心深くなるのはしょうがない。
「とても美味なのだが・・・。おお、甘くて
 冷たくて暑さなど吹き飛ぶわ」
無害な事を示す為か大谷自身がまず口にする。
「未知の物を恐れていては何も初まらん!
 真田幸村、いざ参る!大谷殿!いただきますでござる!」
人より暑苦しい体温が高いせいか大分融解が進んだ
あいすを見て幸村が匙をとった。
食物を掬い口に運ぶ、嚥下する。食事をするのに
当たり前のその行為に全員の視線が集まった。
 
「こ、これは!」
「大将!?未知の物を口にする時は毒見をさせろとあれ程・・・」
驚愕する幸村に心配になった佐助が姿を現した。
「これは・・・すごく美味しいでござる!!」
「・・・それは良かったね・・・」
「おう!大谷殿が言っていたとおりでござる!
 冷たくて甘くて・・・佐助も食べてみろ!」
「いや、俺様はいいって。ちょっ!匙を無理やり口に突っ込むのは
 やめて・・・あれま、これは本当にうまいわ」
そんな真田主従のやり取りに安心した三成たちもさっそく
匙を運ぶ。
 
「・・・!!!」
「か、辛い!」
「・・・なんじゃあ、こりゃあー!」
「うわーん、虫がはいってるよー」
「「・・・」」
 
その場は騒然につつまれる。
器を落として口を押さえる三成、元親、黒田の三人。
泣き出す小早川と無言であいすを見つめる毛利と天海。
 
「何事でござるか!?」
「大谷の旦那、なに入れたの?」
「味が一種類では芸がないと思ってな。
 わさび、唐辛子、からしにいなごの佃煮を入れてみた」
「・・・狙ってやったでしょ。(大将にハズレが来なくて
 良かったよ)」
「我のあいすにはオクラが入っているのだが?」
「好物が当たって良かったではないか」
「・・・我の好物は餅ぞ!」
「私のあいす、甘くないのですが・・・」
「砂糖が切れてしまってな」
 
水を求め元親と黒田は井戸へ向かって走り出し、
なぜか天海はさめざめと泣く小早川を嬉そうに見ている。
元親が選んだ珠からあいすを器に盛り付け小早川に差し出す。
「さあ、金吾さん。これで口直しをして下さい」
「ありがとう天海さま!って、辛いよー」
「おや、間違えてしまいました・・・フフフ」
「見ていなかったのをいい事にワザとだな」
「貴方に言われたくありませんよ、大谷殿」
そうお互いを言い合う二人の顔はとても楽しそうだ。
 
「石田殿、大丈夫でござるか?
 佐助、水を持って参れ」
「はいはいっとー」
何時までもうずくまったままの三成を心配した幸村が
声をかけ、佐助に指示した時だった。
それまでピクリとも動かなかった三成がいきなり立ち上がる。
「おのれ・・・」
わさびのせいで鼻の頭が赤くなり、頬を涙に濡らしながら
肩を震わせ口の中でなにか呻いている様は鬼気迫るものがある。
「おのれ・・・おのれ・・・」
「い、石田殿?」
その様子に思わず後すざってしまった真田主従は
三成が大谷に対する怒りの言葉を口にすると思った。
が、何故か彼の怒りはこの場にいない人物に向いたのであった。
 
「おのれ!家康、許さんぞ!
 イエヤッスウウウ!」
 
「・・・徳川殿は関係ないでござる」
「そっとしておいてやろう・・・」
 
あいすで得た涼も吹っ飛ぶ、そんなある日の出来事であった。
 

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